6.15.2013

Ichiro/イチロー選手のマッサージ

イチロー選手がシーズン最多安打のMLB記録を作ったのは、2004年の10月1日。

同時期、私はロルフィング®を学ぶために、コロラド州ボールダー【Rolf Institute® of Structural Integration】に留学中でした。その記録達成の日の朝、ちょっとしたエキサイティングな出来事が…。

クラスメイトの一人が、イチロー選手の写真がデカデカと載ったニューヨークタイムズの紙面を開いて、「ちょっとコレ見てみろよ!」的なことを言っていた。
見るとそこには、こんな文章が、 “Suzuki's pre-game routine, which includes a deep tissue massage that usually lulls him into a deep sleep, could be the most important part of his preparation.”
「スズキの試合前の日課はディープティシューマッサージです。それは、彼を深い睡眠へ導いてくれるので、試合前の最も重要な準備の一つです。」と、こんな感じかな。

クラスメイト達は文章の中に「deep tissue massage 」を見つけ、「イチローは、コレ誰から受けてるんだ?」と騒いでいました。何故かというと【Rolf Institute® of Structural Integration】では、この「ディープティシューマッサージ=deep tissue massage(深部組織マッサージ)」をロルフィングのベーステクニックとして学んでいたからでした。

私は常々、イチロー選手はトレーニング以外にも『何か特別なことをやっているのかな?』と思っていたので、「deep tissue massage 」を受けていると知り、やはり、イチロー選手の抜群のバットコントロールを生むハンド・アイ・コーディネーションの素晴らしさは、全身にネットワークする「筋膜」に働きかけてるからなのか!?と少し納得。

「ディープティシューマッサージ」は、フリクション(強擦法)やロッキングなどをのテクニックを用い、とてもゆっくりしたスピードで「筋膜」に働きかけます。従って、ニーディング(揉捏法)やストローク(軽擦法)を用いて、速いスピードで筋肉に働きかける従来のマッサージとは違い知覚神経を刺激しすぎないため、「揉み返し」が殆ど無いことが大きな特徴です。なので、アメリカでは特にアスリートに人気のマッサージテクニックです。アメリカでスポーツマッサージといえばコレですよ! このテクニック、日本の『按摩マッサージ指圧師』の学校では、まだ教えられてないんですよね。遅れてる…。

ちなみに【Rolf Institute® of Structural Integration】はロルフィングスクールでありマッサージスクールではないので、「ディープティシューマッサージ」という言葉は使えず、「スキルフルタッチ」という名称で教えられています。コレ、学校に入ってきたばかりの「スキルレス」な連中が、身体に触れることに慣れるために教わるテクニックなのですが、それに「スキルフル」って、ちょっと笑えません?

ロルフィングとの大きな違いは、筋膜を弛めるけど統合(構造と機能の一体化)は目的としないというところ。従ってロルフィングの10シリーズの後に、このマッサージはすべきではないですね。やると折角作った水平性と垂直軸を狂わす可能性が有り、ロルフィングをした意味が無いかも。まぁロルフィングしたら、「ディープティシューマッサージ」や「筋膜リリース」なんて、する必要ないでしょ。ロルフィングの方が、色々な意味で優れてますから。

なぜか日本では、この「スキルフルタッチ」をメニューに加えているロルファーが多いのですが、ロルフィングをおこなう本来の目的を分かっているのなら、やはりメニューに加えるべきではないです。ロルファーはロルフィングだけをすべきです。ロルフィングの本当の凄さを知っている、本場アメリカの名うてのロルファー達がそうであるように…。

イチロー選手の新記録達成の瞬間は、クラスメイト達と遊びに行ったクラブの大型スクリーンで目撃してましたよ〜。毎日毎日、難しい勉強で大変な時期だったので、かなり勇気を貰いました。以下は、2004年の10月1日ニューヨークタイムズ朝刊電子版のコピー。最後のパラグラフのところをご覧下さい。